2018年8月、インド国内で最も人口の多い地区の1つ、パトナ地区の高等裁判所がビハール州のある病理ラボの閉鎖を命令[1]しました。これまでも無許可の「家族経営的な」小規模ラボが、低価格をうたい文句に集客し疑わしい結果を出していたことは、問題視されていました。しかし、取締まりをかわしながら多くのラボが経営を続けてきました。
問題の原因は、インド国立試験・校正機関認定委員会(NABL)による認定が、いまだに多くの州で任意となっている点です。小規模ラボはインド国内には10万以上も、組織化されないままに散在しており[2]、こうしたラボにとって認証はあまりにも高い壁となっています。
PathKind Diagnostics社のCEOで医師のSanjeev Vashishta氏は現状を嘆いています – “10万あるうち、認定を受けたラボは850程度です。自動分析装置を導入しているのはラボのせいぜい10%、半自動化機器の導入比率は30%、残りの60%が手作業です。品質の保証など、とても期待できる状態ではありません”
医療費の大半が自己負担のインドでは、多くの人にとって費用は重要な判断基準です。2017年時点で0.83と高いジニ係数[3]を示し(日本は0.34)、所得格差が大きなインドで医療および臨床検査のリーダーたちは大きな課題に直面しています。現場で働く医療従事者たちのなかでさえ、検査室に対する不信感が高まっています。
Manipal Hospitalsのマネージングディレクター兼CEO、Dilip Jose氏は述べています – “病院での行いは、とかくうがった見方をされがちです。検査を勧めても『金儲けのためだな』と思われてしまう。病院で検査をするように説得するのは、それだけ難しい” Jose氏はVashishta氏をはじめとする数名の経営幹部と共に委員会を立ち上げています。
品質と患者さんの安全にフォーカスして信頼を構築
認定と品質を主軸にした、患者さん・医療従者向けの教育キャンペーンは、ラボや病院が提供するサービスを差別化するうえで有効です。
“消費者向けのキャンペーンを反復して行い、私たちが提供する検査のメリットを伝えています。また生涯教育や座談会を通じて医師たちに働きかけ、私たちの目指すところや、どんな新しい検査・技術が誕生しているかを伝えています”とVashishta氏は主張しました
さらにJose氏によれば“検査を院内化している病院ならば、結果の迅速な提供によってコスト意識の高い患者さんの、検査へのためらいを取り除ける”とのことです。診断サービスを院内化する他付加価値としては、病院が患者さんにとってワンストップ・ソリューションになることや、医師チームとの連携による精密検査パッケージの提供などが考えられます。
“異なる検査を都度に行うのではなく、腎疾患パッケージや発熱パッケージなどを提供されたほうが、患者さんの負担もずっと少ないのです”とJose氏は続けました。
院内ラボも認定ラボも、患者さんがこれまで無認可ラボで経験してきた不信感をプラスの方向に変えることができます。
Jose氏は次のように締めくくりました – “患者さんには思うような結果が得られず、複数の施設で検査を受けなおしたり、検体が紛失してしまった、といった経験をされた方もおられます。だからこそ、私たちはサービスの質に注力しているのです。”
パトナ地区における違法ラボ取締りと時を同じくして、NABLのCEO Anil Relia氏は検体採取センターおよび検査室の評価・認定を、同委員会が開始することを発表しました。また、認定ラボをタグづけ・解析し、消費者が地域の検査室の信頼度を確認できる、モバイルアプリ開発に着手することも表明しています。認定施設を簡単に見つけることは、消費者自身が健康のための賢い選択を後押しすることになります。
[1] “Patna High Court directs state govt to submit district-wise details of illegal path labs being run in the state” http://www.pharmabiz.com/NewsDetails.aspx?aid=110824&sid=1
[2] “Now, only doctors can sign diagnostic reports” https://timesofindia.indiatimes.com/india/now-only-doctors-can-sign-diagnostic-reports/articleshow/59445426.cms
[3] India inequality report 2018: Widening gaps by Oxfam India
This article is based on a panel discussion: Are we ready to drive the next wave of healthcare growth? at LEADx Diagnostics Leadership Summit in Mumbai, India.