新しい血友病治療薬の登場が目前に迫っている今、血友病を正確かつ迅速に診断することが、これまで以上に重要になっています。臨床検査の専門職の方々が血友病をよりよく理解し、患者さんの転帰の改善につながる新たなイノベーションを支援できるように、本記事では血友病の臨床症状、診断および治療について簡単にご紹介します。
血友病とは、またどのように存在するか?
血友病は、血液が適切に凝固できない出血性疾患です。そのため、けがや手術のあとに出血が止まりにくくなったり、自然に出血してコントロールできなくなったりすることがあります。こうした出血はさまざまな医学的問題を引き起こし、ときには命にかかわることもあります。
血友病は、止血に役立つ凝固因子、つまり血液中のタンパク質が不足していることによって起こります。血友病の人は、典型的には、第VIII因子または第IX因子のいずれかの値が低くなっています。血友病の重症度は、血液中にどれだけ凝固因子があるかによって決まります。量が少ないほど、患者は制御が難しい危険な出血発作に直面する可能性が高くなります。
しばしば希少疾患と見なされますが、血友病は世界中で大きな健康問題となっており、20万人以上に影響しています。別の遺伝性凝固障害であるフォン・ヴィレブランド病(vWD)は、世界中でさらに8万4千人に影響を及ぼしています。 第VIII因子の欠乏によって生じる血友病Aは、男性の出生5,000人当たり約1人にみられます。一方、第IX因子の欠乏によって生じる血友病Bは、男性の出生25,000〜30,000人当たり1人にみられます[1]。
血友病はほとんどが遺伝性ですが、一部の家系ではこの病気の家族歴がまったくみられないこともあります。血友病は、約3分の1の頻度で自然に発症します。血友病は主に男性に影響しますが、女性の保因者も多く、まれに女性自身が血友病を発症することもあります[2]。
まれに、人生の後半になってから血友病を発症する場合もあります。こうした「後天性血友病」の多くは、中年または高齢の人、あるいは最近出産した若い女性や妊娠後期の若い女性にみられます。 この状態は、適切な治療によって改善し、消失することが多いです。
血友病はどのように診断されますか?
血友病のほとんどの症例では、過度の出血や、軽いけがでもあざができるといった臨床症状が現れてから、診断プロセスが始まります。 重度の血友病の小児では、通常は乳児期に診断されます。一方、軽度の血友病は、成人になるまで明らかにならないこともあります(なかには、外科的処置の際に過度の出血を経験してはじめて、自分に病気があることを知る人もいます)。
ほとんどの場合、診断の第一段階では、血液が適切に凝固しているかどうかを確認し、凝固因子の欠乏を明らかにするスクリーニング検査を行います。主なスクリーニング検査の種類は以下の通りです。
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- 血算 (CBC) – 血液中のヘモグロビン量、赤血球および白血球数ならびに血小板数を測定します
- フィブリノーゲン – 血液を凝固させて血栓を形成する能力を評価します
- 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT) – 第VIII因子、第IX因子、第X因子および第XI因子の凝固能力を測定します
- プロトロンビン時間(PT) – 第I因子、第II因子、第V因子、第VII因子および第X因子の凝固能を測定します
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診断ワークアップの全体像は、以下のチャートでご覧いただけます。
次に、第VIII因子または第IX因子がどれくらいあるかを調べるために、追加の血液検査を行う場合があります。これらの検査により、血液中の凝固因子の量に応じて、血友病のタイプと、その重症度が軽症・中等症・重症のいずれに当たるかが分かります。カットオフ値は以下のとおりです。
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- 軽度の血友病:凝固因子の正常量の5~30%
- 中等度の血友病:凝固因子の正常量の1~5%
- 重度の血友病:凝固因子の正常量の1%未満
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血友病の家族歴がある場合、キャリアを特定し、妊娠について十分な情報を得たうえで判断できるように、遺伝子検査が行われることもあります。出生前検査により、胎児が血友病かどうかを調べることも可能ですが、この検査には胎児に一定のリスクが伴うとされています。
血友病には現在、どのような治療法がありますか。
現在の血友病治療の中心は補充療法です。補充療法とは、凝固因子製剤を用いて患者さんの血液中の凝固因子を補う治療法です。血友病の治療レジメンは、疾患の重症度によって異なります。重症例では継続的な予防治療が必要ですが、軽症から中等症の症例では、急性出血エピソードに対して必要時(オンデマンド)に行う治療が必要になります。
凝固因子補充療法には、血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤が用いられます。 血友病AおよびB、ならびに一部のvWDの治療には、標準半減期製剤または半減期延長製剤が使用されます。 その名が示すとおり、半減期延長製剤は、標準半減期製剤よりも投与頻度が少なくて済みます。 第VIII因子に対する同種抗体は約30%の患者さんに生じ、このため活性化プロトロンビン複合体製剤、組換えFVIIa、エミシズマブ(血友病Aの管理のために開発された初の二重特異性抗体)などのバイパス剤が必要になります。
補充療法は、血友病の予防および治療の中心的な方法であり続けていますが、デスモプレシン、抗線溶薬、鎮痛薬などの併用療法が用いられることもあります。 (「使用されることができる」はNG)血友病の治療法は、疾患の重症度、患者さんの日常生活、今後予定される手術や処置の可能性などに応じて選択されます。
血友病治療は、今後どのように発展していくのでしょうか。
上に述べたように、現在の治療法には多くの利点がありますが、合併症を引き起こす可能性もあります。たとえば、血液中の凝固因子を攻撃する中和抗体(インヒビター)が生じることや、現在ではまれですが、プールされた血漿由来の凝固因子濃縮製剤からウイルス感染が起こることがあります。もう一つの課題は、治療が遅れることがあり、その結果、血友病患者さんの関節や筋肉、身体のほかの部位に障害が生じてしまう可能性があることです。
こうした問題などに対処するため、研究者たちは非因子補充療法をはじめ、この病気を機能的に治癒できる可能性を持つ遺伝子治療も含め、血友病治療に対するさまざまな新しいアプローチを模索しています。臨床試験の初期結果は有望であり、血友病コミュニティの間に大きな期待を生んでいます。 こうした新しいアプローチにより、発色アッセイの活用など診断手法の変化や、治療モニタリングに関する新たな検討事項が必要になります。
新たな血友病治療への期待が高まるなかでも、血友病を早期かつ正確に診断することは、疾患を正しく見極めて適切に管理するうえで、依然として不可欠です。 質の高い診断法と、それをいつ、どのように用いるべきかを理解している検査専門職がいなければ、患者さんは自分の状態に気づかないままになり、長期的に健康に悪影響を及ぼしかねない、不要なまたは過度な出血エピソードのリスクにさらされます。
参考:
[1] 世界血友病連盟年次世界調査報告書、2020年.
[2] ダニエル・ナンス博士「血友病の女性に声を与える」。
詳細リソース
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- :メイヨークリニック,血友病
- 米国疾病予防管理センターのホームページ
- 世界血友病連盟(WFH)による血友病管理ガイドライン
- 国立心肺血液研究所。NHLBIのウェブサイト。
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