患者価値を高めるためのラボにおける革新

June 19, 2019

臨床検査医学は、新たな時代に差しかかっている。患者ケアにもたらす価値によって評価される時代である。これは、ラボサービスの品質と効率が大きく進歩してきた流れを踏まえた変化でもある。一方で、品質や効率とは異なり、患者価値の向上は、評価がより複雑である。検査の診断的価値のみに焦点を当てる場合、その評価は概してランダム化比較試験で生成されたデータに依存する。しかし、これらの試験では、慎重に選択された参加者を対象として評価が行われるため、対象集団を必ずしも代表していない可能性がある。さらに、検査の診断的価値は、しばしば単独で評価され、実際のケアや患者管理への影響が考慮されないことも少なくない。21世紀の臨床検査医学に求められているのは、診断検査が患者の転帰にどのような影響を与えるかという評価へと軸足を移すことである。患者の転帰が改善されて初めて、検査は患者に価値をもたらすと言える。この変化へのニーズは臨床検査医学に特有のものではなく、ケアファーストから予防ファーストのモデルへと進化しようとする、より広い医療業界の変革を反映したものである。臨床検査医学は、この機会を捉え、変化する環境の中で望ましい成果を実現するために積極的に取り組む必要がある。AL1

では、患者価値はどのように測定すべきだろうか?

診断検査から長期的な患者価値を評価するためには、臨床検査医学チームが患者・医師・業界と緊密に協力し、検査に特化した患者転帰測定モデルを開発する必要がある。このモデルは、次の6つの基本ステップから構成される:

  • 医学的状態の選択 – まず、関連性が高く一般的な疾患・状態を選択し、その状態が患者にとってどの程度重要であるかも考慮する
  • 現在の検査および治療プロセスのマッピング – ケア全体のプロセスを分析し、臨床ケアにおけるギャップを特定する
  • 標準的な患者中心アウトカムの決定 – ケアサイクルの各ステージで追跡すべきアウトカムを設定し、異なる成功レベルに対する主要業績評価指標(KPI)を定める
  • データ収集の開始 – ラボの記録だけでなく、ケアチームおよび患者からのデータにも焦点を当てる(完全なデータセットを得るためには、データ収集をケアプロセスおよびワークフローの自然な一部に組み込むことが重要)
  • 患者およびケアチームから得られた完全なデータセットを評価 – 検査が患者価値を向上させているか、そしてラボが費用対効果の高い実施を行っているかを判断する
  • KPI に対する実際のアウトカムをベンチマーク分析し、そのデータを公開することで、ベストプラクティスを共有し、議論を活性化させ、フィードバックを得ることができる

患者価値を評価するうえで変化する、業界とラボの関係性

ラボが、こうしたプロジェクトを独立して実施するための十分なリソースを持っている可能性は高くない。時間と人手の投資に加えて、簡単にはアクセスできない資本や専門知識も必要となるためである。ラボは業界と協力することで、すべてのリスクを単独で負担することなく、プロジェクトを遂行することができまる。さらに、このような協働は、特にプロセスマッピングの工程で価値を発揮し、より幅広い専門知識へのアクセスを提供する。これにより、ラボの医療チームは、患者に実質的な価値をもたらすイノベーションを実装できるようになる。欧州では、このような協力的かつリスク共有型のアプローチを法律が支援している。他の地域や国では、このアプローチに対する法的枠組みが整っていない場合もある。そのため、関係するリーダーシップ層や医師に対して教育を行い、ラボチーム内で必要なスキルと能力に投資し、政策立案者に対してもその価値を示すことで、診断検査を長期的な患者アウトカムへの影響に基づいて評価する取り組みが求められる場合がある。とはいえ、このプロセスを推進するために、自らの専門知識を積極的に共有しようとするラボや業界パートナーも存在する。これは決して乗り越えられない障害ではない。むしろ、21世紀の臨床検査医学を提供することを使命とするチームには、こうした課題を前向きに受け入れる姿勢が求められる。当社は、疾患の根本原因に取り組むことで患者の転帰改善に貢献することを、医療エコシステムの不可欠な一員としての責務と考えている。


本記事は、中国・広州で開催された「Roche Efficiency Days (RED) 2018:REDefining Perspective」におけるプレゼンテーション「心不全患者管理における価値ベースのイノベーション」に基づいている。

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