当院の検査室では最近、心不全管理における新しい診断マーカー、とりわけナトリウム利尿ペプチドの患者価値を向上させることを目的とした研究を開始した。心不全を対象に選んだ理由は、スペイン国内で流行と言えるほど患者数が多く、多くの人が症状管理のために複数回の入院を余儀なくされているためである。
研究プロセスは、心不全患者の現在の患者行程をマッピングすることから始まった。この工程では、医療コンサルティング会社と協力し、臨床ケアにおけるギャップを特定し、それらに対処していった。これは、プロジェクトの成功を確実なものとするために、最も重要なステップであった。心不全では、早期かつ正確な診断の確立が困難であり、
- 複雑な検査を必要とする。しかし、心不全が早期に同定されれば、死亡率および合併症発生率を低下させることができる。
- また、心不全患者に対するフォローアップケアは、十分に個別化されていないのが現状である。ケアチームは学際的な構成で、関係する診療科が多岐にわたるため、ケア内容が大きくばらつきやすい傾向がある。
そこで私たちは、患者に対する早期発見と集中管理の価値を評価するため、1週間以内にすべての診断が確認される2つの介入を設計した。そのため私たちは、一次診断検査としてB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP) およびN末端プロBNP(NT-proBNP) を採用し、救急治療室からプライマリケアまで、利用範囲を拡大した。さらに、疑わしい症例を迅速に紹介できる 心不全部門も設置した。また、NT-proBNPの結果に基づいて来院頻度を個別化し、患者のフォローアップケアを最適化するように設計した。
次に、追跡すべき標準的なアウトカムの一連のセットを定義した。この際、ハーバード・ビジネススクールのMichael Porter氏 が提唱したアウトカム測定の階層[1]、および心不全患者のアウトカム測定のためにInternational Consortium for Health Outcomes Measurement(ICHOM)が開発したガイドライン[2]を参照した(図1)。
アウトカムを定義したら、次に データ収集プロセスの構築 に移った。ICHOMガイドラインに従い、ケアサイクルのさまざまなタイミングでこれらのデータ収集ポイントをシステムに組み込んだ。また、患者にも質問票(アンケート)の設計段階から参加してもらい、データ入力が正確に行われるよう複数のチェックポイントを設けた。
次に、異なるシナリオに基づく、一連の患者転帰および費用便益に関するKPIを策定した。このプロジェクトを開始する前は、90日以内の再入院率は37%であった。介入後の予測では、成功の程度に応じて再入院率を28%(最小限の成功)、19%(中程度の成功)、または9%(非常に成功した場合) まで低下させることが可能であると見積もられた。
まだ1年分の分析は完了していないが、得られたデータは非常に有望である。再入院する患者数は減少し、再入院の回数も明らかに少なくなっている。当院のデータでは、30日再入院率が88%減少した。また、再入院率は6か月で70%、1年間で45%低下している。さらに、心不全患者による救急外来受診の回数も減少した。患者の健康状態も改善しており、ニューヨーク心臓病学会(NYHA)のクラスIIIに分類される患者数は減少し[3]、身体活動が困難な患者も通常より大きく減少している
[1] Porter, E.M., 2010. What is Value in Health Care?The New England journal of medicine.363, pp.2477-2481
[2] ICHOM Heart Failure Standard Set
[3] New York Heart Association分類
本記事は、中国・広州で開催されたRoche Efficiency Days(RED)2018「REDefining Perspective」における、 「心不全の患者管理における価値ベースのイノベーション」のプレゼンテーションに基づいている。

