理想的な世界では、狭心症の強い痛みに苦しむ患者は迅速に診断を受けることができます。しかし、胸痛を訴えるタイ人の多くは、治療を求めることに消極的です。多くの人が受診を先延ばしにし、なかには2日間も医師の診察を遅らせる場合があります。国民の食生活や生活習慣の変化もあり、冠動脈心疾患による死亡率が上昇し続けているのも不思議ではありません[1]。臨床検査医学は人々の健康志向行動にほとんど直接的な影響を与えないかもしれませんが、私たちは可能な限り迅速で正確な診断を提供することを保証できます。そして、このような時間短縮を実現する上で主導的な役割を果たすことができます。Khon Kaen Universityでは、患者が医療施設への到着から治療までの過程を振り返りました。臨床評価後に、心電図モニタリングに遅延が生じる可能性があり、さらに深刻なことに、トロポニン検査結果に遅延が生じる可能性があることがわかりました。こうした遅延を解消するために、看護師を含むより多くの医療従事者が心電図検査の結果を読み取れるようにして、患者の迅速なモニタリングを確実にできるようにしました。同様に、心臓関連事象または合併症のリスクがある患者が迅速にトリアージされ、必要なフォローアップケアを受けられるように、治療時にトロポニンT値のスクリーニングを組み込みたいと考えました。デンマークの研究者は、2013年にポイント・オブ・ケア(POC)のトロポニンT検査の診断的価値を評価[2] し、トロポニンTレベルが50ng/Lを超える患者の89%が心臓関連症状に罹患していることを報告しました。この高値は、患者が急性冠症候群の診断を受けたか否かにかかわらず、死亡率が3~10倍高いことにも関連していました。したがって、ST上昇型心筋梗塞でない患者でさえ、トロポニンTレベルが高値の場合はより高い死亡リスクに直面し、24時間以内に手術すべきであることから、トロポニンTスクリーニングを導入することにしました。

診断サービスにPOCトロポニンT検査を追加したことで、私たちが患者に提供するケアは大きく変革されました。症状の臨床的評価を心電図およびPOCトロポニンTと組み合わせることにより、この診断経路は価値を提供し、生命を救うことができます。
[1] Kiatchoosakun, S., et al., 2012. Coronary artery disease in the Thai population: data from health situation analysis 2010. Journal of the Medical Association of Thailand, 95 supplementary 7, S149-155.
[2] Stengaard, C., et al. 2013. Quantitative Point-of-Care Troponin T Measurement for Diagnosis and Prognosis in Patients With a Suspected Acute Myocardial Infarction.The American Journal of Cardiology, 112(9), pp.1361-1366.

