医療提供システムへの需要拡大やCOVID-19パンデミックによる深刻な混乱を受け、アジア太平洋地域の多くの臨床検査室は、ロックダウンや隔離措置などのパンデミック対策の中でも、ワークフローを改善し、患者により良いサービスを提供し、継続的なケアを確保するため、デジタル病理学システムの導入が進んでいます。検査室がデジタル病理学の導入を始める方法を理解するために、日本鋼管病院の病理診断科部長、International Academy of Pathology (IAP) の次期理事長の 長村 Robert 義之博士(MD/PhD)にお話を伺いました。長村博士はデジタル病理学の使用に関する 3 つの重要な取り組みを提案しました。
新しいアプローチを受け入れる
病理医は保守的な傾向があり、馴染みのある機器を使用し続けることを好むことが多いですが、長村博士は、デジタル化を検討するべき十分な理由があると考えています。「画面上では、スライド上にどれだけ断片が散らばっていても、ひと目で全体像を見ることができます。」と博士は言い、顕微鏡下では重要な部分を見逃す可能性があると指摘しています。「高倍率まで拡大してもぼやけることはなく、必要なときに特定の断片へいつでも戻ることができます。」長村博士はこの新しいアプローチを適用し、デジタル画像とスライドの整合性が非常に優れていることが確認しました。長村博士の比較研究では、症例の90%が完全に一致しました。結果が異なった数少ない例は、全体的な診断の大きな不一致(良性か悪性か)ではなく、検出された異形成の程度によるものでした。また、ヘリコバクター・ピロリの検出が時に画像上で難しい場合がある点も指摘しています。国内の規制により、(国の承認を得ていない限り)多くのデジタル病理学プラットフォームで行われた診断は、顕微鏡で確定する必要があるため、長村博士と彼のチームは、従来の手法でデジタル病理学の結果をすべてダブルチェックしています。長村博士は、政府がより多くのデジタル病理学プラットフォーム承認し、病理医が追加の確認作業を行うことなくデジタル画像から直接診断を下すことができるようになることを期待しています。
まずは特定用途での利用から始める
出発点として、長村博士は日本鋼管病院でデジタル病理学を導入しましたが、対象とする検体は特定の種類に限っていました。これは大きなコミットメントが不要であり、検査室がデジタル病理学を評価する良い方法であり、病理医がハンズフリーのアプローチに慣れやすくなります。同院の病理検査室の 1 日の業務量の約60 % (施設によって異なる) を占める小規模な消化管生検は、これらをすべて最初にデジタル病理学で確認し、その後、政府の要求に基づきスライドで確認します。長村博士は、外科検体にはこのアプローチをまだ使用していませんが、このような検体にもデジタル病理学を広げる計画を立てています。「近い将来、デジタル化が進むことを願っています」と彼は述べています。
COVID-19の経験から学ぶ
自宅待機令が出された地域の検査室では、実際に病理室に行かなくても診断できることの価値が明らかになりました。長村博士の検査室はロックダウンの対象にはなりませんでしたが、米国やその他の国の検査室はロックダウンの対象となりました。「自宅に留まり、デジタル病理学を用いて遠隔で診断を行っていた数はかなり多いと聞きました。」と博士は述べています。長村博士は病院に通い続けることができましたが、パンデミックの状況から病理医の遠隔作業の課題を理解することができました。例えば、病院と自宅の間で個人データを共有するには、安全なインターネット接続が不可欠ですが、現時点では多くの場所でそのような接続がありません。「これが日本の大きな問題です」と述べています。この問題を解決し、デジタル病理学の利用を拡大することで、病理医の業務は将来、より強靭なものとなることが期待されます。

