日本の検査室におけるアッセイ変更の管理: PIVKA-II 移行のケーススタディ

December 4, 2023

新しい機器の導入のために、すでに確立されているオペレーションを変更するのは、大変な作業です。新しいバイオマーカーを導入および検証するという大仕事に加えて、それを適切に使えるよう検査室スタッフを訓練しなければなりません。そして、適切なタイミングで検査依頼ができるよう、臨床医をサポートする必要があります。考えただけで途方に暮れてしまいます。しかし、それでも変化は必要なので、検査室リーダーは新しいバイオマーカーを積極的に検討し、それを導入するための明瞭なロードマップを準備する必要があります。

最近、日本の大阪赤十字病院の臨床検査チームは、ある PIVKA-II アッセイを別の PIVKA-II アッセイに切り替えました。そのプロセスにおいては、切り替えに伴う通常の課題だけでなく、単位変更の管理という特殊なタスクも発生しました。Lab Insights は、このアップデートがどのように調整されたのか詳しく知るため、同病院の技師長である佐藤信浩氏にインタビューしました。佐藤氏の経験は、どの検査室にも共通して適用できる、アッセイ変更管理の基本原則を浮き彫りにするものです。

PIVKA-II採用の過程 肝細胞癌の診断を補助するために使用されるバイオマーカーである PIVKA-II の

検査は、AFP タンパク質検査と組み合わせると、AFP タンパク質検査単独の場合よりも、この癌の早期発見の感度を高めることができます[1]。PIVKA-II 検査は、世界中の検査室において、AFP 単独検査という古いアプローチを補完しています。PIVKA-II 検査により、臨床医が患者を早期に診断することができ、生存の可能性が最も高いうちに治療を開始できるからです[2]。

佐藤氏のチームは、PIVKA-II 検査の旧プラットフォームから新プラットフォームへの切り替えに成功し、検査所要時間を短縮して全体のランニングコストを減らすことのできるシステムを選択しました。

「この腫瘍マーカーを選択した理由は、がんゲノム医療中核拠点病院で広く使用されていたこと、そして、関連病院である京都大学医学部附属病院でも採用されていたことです」

「臨床検査科での変更理由を臨床医に説明し、経過観察に使用する項目に同意してもらうことが大切です」と佐藤氏は述べています。佐藤氏は、病院内の関係者がプラットフォーム変更の理由を理解し、新しいシステムで使用するこれまでとは異なる測定値を理解できるよう、教材を用意しました。

これらの点を強化するためには、チームスタッフのトレーニングも極めて重要です。「私たちがこの結論に至った理由を、チームスタッフが自信と誇りをもって説明できるようにしたいと考えています」「私たちは、単なる検査請負業者のようにはなりたくないのです」と佐藤氏は説明しています。

さらに佐藤氏は、新しいアッセイについて、またこのアッセイが肝細胞癌の診断補助として病院、医師および患者にもたらす価値についての認識を高めるため、会議でデータを発表しました。「アッセイ切り替えの提案が、検査効率の向上やランニングコストおよび検査所要時間の削減など、検査全体に基づいていれば、切り替えを円滑に進めることが可能だと思います」「単一の項目にのみ焦点を当てるのではなく、病院の目標や機能の観点から提案するとさらによいでしょう」と同氏は指摘しています。

アッセイユニット変更への対応

チームが直面した課題として特に大きかったのは、新しいシステムで報告される測定単位の変更でした。新しいシステムでは値が ng/mL で報告され、カットオフ値は 28.4 です。旧システムでは、単位は mAU/mL、カットオフ値は 40 でした。 混乱を避けるため、臨床検査室スタッフは以前の検査値の表示を中止し、新しいアプローチに関して消化器内科に明確に説明し、教材を提供しました。

新プラットフォームで得られた結果を旧プラットフォームの結果と比較する必要のある臨床医には、診断性能を比較して新プラットフォームで旧プラットフォームと同等の正確な結果が得られることを示した論文を利用できるようにしました。

腫瘍マーカーの値が単一時点だけで使用されることはめったにありません。ほとんどの場合、活性の増減を評価するために経時的に評価され、比較されます。佐藤氏のチームは、時間の経過とともに新アプローチの結果が増えるにつれて、異なる測定単位に変更しても、旧アプローチと同じくらい簡単にモニタリングができるようになると考えています。多少の移行期間を経れば、その後は単位の変更が臨床医や患者を混乱させることはないと思われます。

変更管理の教訓

2018 年に ISO 15189 認証を取得した佐藤氏の検査室には、65 名の医療技術者が在籍しており、生化学、血液学、免疫学、微生物学的検査など、さまざまな診断プラットフォームを活用しています。同検査室は最近、情報管理方法の決定にも関わるプロセスであるがんゲノミクス関連の検査法についても確立しました。

同検査室は複数の団体に所属しており、複数の品質管理システムを活用することで、常に最高水準を維持し、最新技術を採用することができている、と佐藤氏は述べています。同検査室のようなところでは、アッセイの変更は避けられません。

新しい PIVKA-II アッセイを導入した際の同氏の経験から、私たちは何を学べるでしょうか?以下に要点を挙げます。

  • 決定の経緯を、所属している医療組織の関係者全員に明確に説明する
  • 決定を揺るぎないものとするために、自身のスタッフをきめ細かにトレーニングする
  • 病院および患者アウトカムにもたらされる価値の大きさを、全体的な視点から伝える
  • 新しいシステムから得られるメリットは、アッセイ単位の変更による短期的な不便をはるかに上回る

PIVKA-II 検査の詳細については、下記の文献をお読みいただくか、この動画インタビューをご覧ください。

参考文献:

[1] Wu, J.et al. (2018) ‘Diagnostic value of serum Pivka-II levels for BCLC early hepatocellular carcinoma and correlation with HBV DNA’, Cancer Biomarkers, 23(2), pp. 235–242. doi:10.3233/cbm-181402.

[2] Chan, H.L. et al. (2022) ‘Performance evaluation of the ELECSYS pivka‐ii and ELECSYS AFP assays for hepatocellular carcinoma diagnosis’, JGH Open, 6(5), pp. 292–300. doi:10.1002/jgh3.12720.

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