妊婦健診は一般的に幸福な機会であるが、その反面、どの妊娠にも染色体異常のリスクが伴うことから、多くの女性が依然として不安を感じている。幸いにも、非侵襲的出生前検査技術(NIPT) の進歩により、検査プロセスがこれまで以上に便利で信頼性が高くなっている。
NIPTでのcfDNA解析の台頭
1990年代に導入されて以来、妊娠初期複合スクリーニング検査(FTS)は、出生前検査における一般的な手法となっている。このアプローチは、血清生化学検査と 胎児の後頸部浮腫(通常妊娠11~13週)の組み合わせに依存する。信頼性の高いスク [1] リーニングにより、ダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)などの 一般的な染色体異常を検出する。2018年のNIPT Forum Asiaにおいて、タイのSiriraj Hospitalの 産科・婦人科医であるDr Tachjaree Panchaleeによると、FTSは素晴らしい手法だが、高い偽陽性率と低い陽性予測値を伴うとの報告がある。 FTSは84~90%の検出率と5%の偽陽性率を達成することが示されており[2]、これは全くないよりはましだが、明らかに最適とは言えない。しかし2011年以降、FTSに挑む新たな手法が登場している。これらの手法は、細胞遊離DNA(cfDNA)解析に基づき、非侵襲的に胎児の染色体異常をスクリーニングする。「[FTS]はセルフリーのDNA検査に取って代わられました。」と、Chinese University of Hong Kong、産婦人学科の Liona Poon教授は、同イベントで述べた。胎盤由来DNAの断片は、母体血液中の総cfDNAの平均13%を占める[3]。母体血中には、早ければ妊娠32日目から150~200塩基対の胎児DNA断片が認められ[4]、経時的に増加する[5]。これらの断片は、早ければ分娩後2時間から母体の血液から消失する[3]。母体および胎児のcfDNAを分析することで、ラボの臨床専門検査技師は、染色体異常について胎児を非侵襲的かつ正確に評価することができる。cfDNA解析に精通したラボは新たな応用分野の最前線に立ち、将来にわたって提携産科医に付加価値を提供できる。検証済みの参照ライブラリへのアクセスが拡大するにつれ、cfDNA検査の応用範囲は将来的に他の染色体異常にも拡大される可能性がある。「すべての女性が自分自身で選択する権利を持っているため、利用可能なスクリーニングツールで最新の状態を維持することは、医療提供者の責任です。」と、Panchalee医師は付け加えた。
cfDNAへのアプローチ
あらゆる新たな発見と同様に、NIPTにおいても、複数の手法がゴールドスタンダードの地位を争っている。これらは、全ゲノムおよび特異的染色体配列決定からマイクロアッセイベースのプラットフォームに及ぶ。最も初期に用いられた技術のひとつは、超並列(「ショットガン」)シーケンシングである。この方法は目的の領域を標的とするのではなく、母体血漿中に存在する全てのcfDNA断片の全ゲノムを評価する。全ゲノムシーケンシング[6]では、数千万個の配列読み取りが位置合わせされ、ヒト参照ライブラリに対してマッピングされて、得られたデータを元の染色体と一致させる。そして、マッピングされたデータが計数されて、胎児が染色体異常を有するかどうかを判定する。

cfDNAの潜在的な影響とは?
高リスクまたは中リスク妊娠に限って提供されるスクリーニング検査として、cfDNA検査はすでに女性への選択肢を変えつつあり、流産リスクや不安に関連する処置を減らしている。香港の妊婦を対象とした研究[11]では、cfDNA検査の導入後、侵襲的な検査の割合が大幅に低下したことが明らかになった。別の非侵襲的検査法を産科医に提供できる検査室は、妊婦がより決定的に情報に基づいた意思決定を行えるようにし、最終的に不必要な侵襲的処置を回避できるようになる。
参考文献:
[1] Malone, D.F., et al., (2005).First-Trimester or Second-Trimester Screening, or Both, for Down’s Syndrome.The New England journal of medicine.353(19), pp.2001-2011.
[2] Li, S.W., et al., (2015).The assessment of combined first trimester screening in women of advanced maternal age in an Asian cohort. Singapore medical journal, 56(1), pp.47-52.
[3] Kotsopoulou, I., et al., (2015).Non-invasive prenatal testing (NIPT): limitations on the way to become diagnosis, Diagnosis, 2(3), pp.141-158.
[4] Taglauer, E.S., et al., (2014).Review: cell-free fetal DNA in the maternal circulation as an indication of placental health and disease. Placenta, 35 Suppl(Suppl), S64-S68.
[5] Wataganara, T., et al., (2004).Cell-free fetal DNA levels in maternal plasma after elective first-trimester termination of pregnancy.Fertility and Sterility, 81(3), pp.638-644.
[6] Swanson, A., et al., (2013).Non-invasive Prenatal Testing: Technologies, Clinical Assays and Implementation Strategies for Women’s Healthcare Practitioners. Current genetic medicine reports, 1(2), pp.113-121.
[7] Norwitz, E.R., & Levy, B.(2013).Noninvasive prenatal testing: the future is now. Reviews in obstetrics & gynecology, 6(2), pp.48-62.
[8] Kim, S., et L., (2016).Comparison of two high-throughput semiconductor chip sequencing platforms in noninvasive prenatal testing for Down syndrome in early pregnancy. BMC medical genomics, 9(1), pp.22.
[9] Juneau, K., et al., (2014).Microarray-Based Cell-Free DNA Analysis Improved Noninvasive Prenatal Testing.Fetal Diagnosis and Therapy, 36, pp.282-286.
[10] Dahl, F., et al., (2018).Imaging single DNA molecules for high precision NIPT.Scientific Reports, 8, 4549.
[11] Cheng YKY., et al., (2018). Women’s preference for non-invasive prenatal DNA testing versus chromosomal microarray after screening for Down syndrome: a prospective study.BJOG, 125, pp.451-459.
この記事は、タイ・バンコクで開催された2018 NIPT Forum Asiaにて発表された「臨床的意義を有するNIPT技術の進化」および「最新のエビデンスとcfDNA検査の導入モデル」を元に作成された。


