検査室は世界の医療システムの隠れたヒーローです。臨床上の意思決定の70%は臨床検査データにもとづくものであり、精度の高い臨床検査は医療分野のあらゆる専門家にとってきわめて重要な存在です。検査技師は医師の診断に欠かせないスペシャリストであって、患者さんの治療計画を迅速化するだけでなく、保険会社や政府プログラムが、低コストで医療を提供できるようにサポートしている存在でもあります。
しかし、検査室は医療分野の大事な資産と認識されず、単なる日用品のような存在になる危機に面しています。検査室の価値が分析パフォーマンスではなく分析量で評価され、その本当の価値が失われつつあります。価値を「製品の利用価値」と定義し、患者さまのベネフィットの重要性を考慮した場合、検査室は医療分野で最も活躍しているプレイヤーの1人といえるでしょう。
Source: Steven Zibrat via “Leveraging Laboratory Expertise to Bring Value to Healthcare”
検査室外の医療従事者に臨床検査の重要性を理解してもらうには、検査室のスタッフが主導権を握り、革新的アプローチを駆使しながら専門知識を活用することが必要です。患者さんの治療システム改善に注力することでポジティブな変化が生まれてきます。
できることを見つけていこう
まず第一歩として、臨床的有効性のエビデンス(どのプロセスや検査が一貫して正確な結果を生み出すか)を検討し、エビデンス情報を発注先である医師・看護師・外科医などに発信することです。どこに患者さんや医師の「満たされていないニーズ」があるのか、そのニーズに対応できるポイントを見つけていきましょう。成果とお金の流れの関係を見直すなかで、品質管理を次のレベルに進化させる方法、再検査数を最小限に抑える方法がないか検討してみましょう。
Source: Robert H. Christenson via A Value Based Proposition for the Lab
改善が必要なプロセス問題の絞り込みに苦労しているのであれば、一旦検査室の枠から出てみましょう。臨床医と語り合う場を設けることで新たな気づきがあるはずです。検査プロセスでよくある問題点や再発エラーを洗い出していくとよいでしょう
臨床的有用性
ボストンヘルスケア協会のCharles Mathews副会長は、あらゆる検査室に次のようなアドバイスをしています:「診断技術の価値を病院経営陣や技術採用委員会に『売り込む』べきだ。そうすることで病院側のニーズに合う診断技術の条件と足並みを揃えることができる。」
Dr Robert Christensonは次のようにプレゼンテーションで述べています:「血液サンプルの溶血は、他のどの診療科よりも救急診療科(ED)で頻繁に発生している。そのせいで検査結果の信頼性が低くなることや、再検査に手間取ることがある。これは医療現場の大きな問題だ。EDの患者から血液サンプルを採取する際に、溶血率を下げるためにできることはあるだろうか?」
Source: Robert H. Christenson via A Value Based Proposition for the Lab
まずこのトピックについて報告されている全研究に目を通すことから始めましょう。この特定の問題については、ストレート型ニードルによる静脈穿刺とカテーテルのデータが揃っています。グラフを見ると、明らかにストレート型ニードルのほうが溶血率軽減にはるかに効果的です。さらに1歩進めてこの情報を他の医療関係者に発信すれば、どのED現場でもより良い医療を提供することができます。
オープンなコミュニケーション
質問を投げかけ、医療現場で見つかった問題点に挑戦することが重要です。検査室の枠組みの外に出ることには大きなメリットがあります。ラボから一歩外に出ることで生まれる他の技術者を交えた交流も非常に大切です。グループ活動から検査室のスタッフはお互いに助け合いながら問題を解決することができ、既定アプローチの質をさらに高めていくことができます。質の高いラボワークは、ヘルスケアプロセスを全面的に向上させると同時に、保険会社・患者さんのご家族・政府プログラムが負担するコストの削減につながります。
医療システムにうまく組み込まれた、効率的で簡単に利用できる検査室の利点は無限にあります。そうしたラボにするためにスタッフは「慣れ親しんだ安全地帯」から一歩踏み出し、ラボ医療の重要性を経営陣や医療従事者に売り込む努力が必要です。「はっきりと目に見える」検査室を確立することで、医療費増に対する打開策を生み出し、さらに患者さんに必要なケアをよりスムースに提供できることになります。
Source: Steven Zibrat via “Leveraging Laboratory Expertise to Bring Value to Healthcare”
This article is based on a presentation: Leveraging Laboratory Expertise to Bring Value to Healthcare at Roche Efficiency Days (RED) 2017 in Taipei, Taiwan.