現在の課題を解決するために検査室の未来を再考する

November 12, 2019

臨床検査医学の分野が絶えず進化していることは周知の事実です。コスト削減、スピード向上、品質向上を求める絶え間ない圧力の下、世界中の検査室の専門家は、検査室における高度に自動化された超効率的な技術に対する高まる期待に応えるためにも努力しなければなりません。これらの課題はリソースの問題に収束し、医学検査室の将来における人間と機械の役割に関する疑問を引き起こします。限られた時間、予算、人員の中で、検査室は医療検査と技術の着実な進歩をどのように組み込み、それを提供できるでしょうか?現在および将来の全ての利害関係者に最適な検査室を構築するために何ができるでしょうか?一部の専門家は、その答えは臨床検査医学の変化の仕方を再発明すること、すなわち、それらの要求が何であるべきかについての積極的な定義することによって、検査室が現在および将来の要求に適合する世界を作り出すことにあると示唆しています。

課題を理解して問題を再定義する

科学、技術、財務上の圧力、社会的期待、仕事量、労働力、労働環境が進化する中で、検査室は適応する必要があります。「特にタイにおける検査室の課題は、技術の変化、それ以外の人間的、技術的、あるいは生態系的な変化です。」と、タイのバンコクにあるProfessional Laboratory Management Corp(PROLAB)のマネージングディレクター、Nitaya Chomngam氏は述べています。「検査室が変化に適応しない限り、混乱が起こる可能性があります。」大部分の検査室が現状維持に苦慮している中で、一歩先を行くことは不可能に思えるかもしれません。しかし、臨床検査医学の現在の傾向に基づけば、将来の課題のいくつかは予測することができます。科学は急速に、より精密で個別化された医療能力に対応しつつあります。 今後、この分野が直面する可能性のあるその他の変化として、健康リスクの遺伝的予測や、モバイルやデジタルツールを介した結果への極度のアクセス性と即時のフィードバックに対する一般の期待の高まりなどがあります。「[人工知能](AI)は避けられません。携帯電話はほぼ何にでも使えます。ですから将来的には、一人ひとりに適した体裁を整えていく必要があります」とChomngam氏は述べています。「すべての検査室は変化に適応する必要があります。新たなパラダイムが必要です。それは簡単ではありませんが、必要不可欠です。手遅れになる前に、すぐに始める必要があります。」未来型臨床検査医学は、現在検査室システムが分析を装備していないタイプを含む、収集・分析される客観的医療データの種類にも新たな選択肢をもたらします。「私は、自動診断、リモートケア、在宅ケアなどを含む個人の医療のために、生体からセンサー で収集した時系列デジタルヘルス情報をどのように管理し、活用するかについて懸念しています」と、浜松医科大学医学部医学科臨床検査医学教授の前川真人氏は述べています。「ここでは、個人の健康記録も密接に関与しています。」電子カルテや個別モニタリングアプリ・機器と連携するデジタル検査報告システムは、現在の検査科学とその将来を融合するための具体的かつ将来的な目標を提供します。「単にデータを得るだけでは不十分です。得られたデータが品質保証されたものでない限り、データに基づいて治療方針を立案する際に問題が生じる可能性があります」と前川氏は述べています。「品質保証は常に重要なテーマです。」個人用健康アプリ、精密遺伝子検査、最先端の機器から生成される新しいデータを臨床的に有用にすることは課題です。臨床的意思決定は、データの品質と医師および患者の解釈能力 に依存します。「将来を見据えた検査室は、変化に適応し、ITを活用し、省力化された自動化を使用して効率を高めなければなりません」とChomngam氏は述べています。「また、物事を管理するのは人間なので、人間的な側面を軽視してはいけません。自動化がすべての答えではありません。」このようなデータのフィルタリングにおいて、どのようなデータが行動に値するのか、どれが不要なのかを特定して理解する役割を積極的に担う検査室は、長期的にその価値を高めます。

検査室における人間の未来を切り開く

課題を予測する能力は、臨床検査医学の新たな扉を開きます。検査室のリーダーの中には、臨床検査医学が本質的に受動的であり、問題を解決するための自ら解決の方向性を定義するのではなく、要求が生じたときに対応していることが問題の一因だと考える人もいます。今日の検査室マネージャーには、人間の関与が不可欠な領域を見極め、それを維持する責任があります。「検査業務を可能な限りAIやロボットに任せる一方で、検査プロセス全体の標準化と統一化を目指して技術革新を推進することが必須のようです。」と前川氏は述べています。「それが実現できれば、臨床検査技師は検査の前後に人間にしかできない業務に集中することができます。」これには、思考集約的なプロセスにおいて、検査専門家の役割を確固たるものにすることを意味します。こうした判断力や解釈能力こそが、現在いかなる機械も模倣できないものです。「私たちは、より多くの解釈的なコマンドを持つ必要があります。」とマレーシアのHospital Pulau Pinang Georgetownで化学病理学ユニットの責任者であるMohd Jamsani Bin Mat Salleh氏は述べています。同氏は、技術が支配する分野においても、検査専門家が品質管理と検査室の信頼性をしっかりと掌握し、どの結果が有効でどれが疑わしいかを判断する責任をもつべきだと主張しています。「結果を出す前に、すべての検査とさまざまな研究を行わなければなりません。最終的な結果は信頼できる真正な結果であるべきです。」検査室における情報技術(IT)の増加に適応することは不可欠です。ありがたいことに、これは技術が検査室、臨床医、患者のためにどのように機能するかを改善し、設計する機会を提供します。「私たちができる最も重要なことは、これらすべてを箱の中で考えることではありません。箱の中で考える必要もありません。むしろ、箱なしで考えるべきです」とJamsani医師は述べています。「つまり、単に『これが枠組みです:財政的な圧力や人材不足の問題に合わせて働かなければならない』と考えるだけではない、ということです。代わりに、これらの課題を克服できる何かを模索するということです。自らの存在意義を示し、そして持っているあらゆるリソースを真の集約化[そして]統合によって最適化できるようにすることが重要なのです。」積極的な変化の機会には、スタッフの教育と専門家間の交流の拡大、情報セキュリティを含む個別化医療やデジタルコミュニケーションといった予想される将来の傾向に対応するシステムの導入、標準化、エラーの削減、効率化という人間の目標を最適化するための検査技術の活用が含まれます。環境の変化に合わせて独自の調整を実施することで、臨床検査医学における技術の浸透をスタッフが受け身で受け入れるのではなく、積極的に取り組むべき課題として再解釈することが可能になります。これは、他者の期待に応えるという圧力の高まりにもかかわらず、それに依存することなく臨床検査医学の分野を進歩させ、再編する新たなパラダイムです。分野の課題を、自らの手で解決するという姿勢が求められます。一部の検査室では、このようなアイデアの創出にスタッフを関与させています。実際のところ、これは個々の検査室や従業員にとっても検査室マネジメントの将来にとっても有益です。「PROLABは、検査室のコスト管理と削減にスタッフが参加することを奨励しています。」とChomngam氏は述べています。「スタッフが『これは効果がある』と思うことを提案できる継続的な品質改善プロジェクトがあります。その提案が実際に会社のコスト削減につながった場合、その一部をスタッフに還元します。」

新たなパラダイムの到来

箱の中でも外でもなく、箱なしで考えることは、先を見据えた検査室のリーダーが、臨床検査医学のソリューションと新たなパラダイムを見出す助けになります。この分野における革命は、外部からの圧力だけで推進される必要はなく、優れたリーダーシップやチームワークを含む、内部からの積極的な進化と発展によっても実現可能です。「臨床検査室は座って対応するだけではいけません。もっと主体的になり、予防的な側面に焦点を当てる必要があります。」とChomngam氏は述べています。「近視眼的な考えをやめることは、検査室における技術の可能性を開くうえで有益です。現在の役割を超えて、技術に何をしてほしいかという大局的な視点で考えることが重要です。長期的に見てみましょう。予防にかかる費用は治療にかかる費用よりも少ないと信じています。ですから予防に焦点を当てましょう。」リーダーは、検査室で何を達成しなければならないかだけでなく、何を達成したいのかを自分自身に問うことが重要です。自分が働いている目の前の空間 を超えて考えることは、現在と将来の両方に意味のあるソリューションを考案するために不可欠かもしれません。「私たちは[管理者]に『もっと予算が必要です』と繰り返し訴えるのではなく、既存のリソースを活用してパフォーマンスを向上させる方法を革新的に考えています。」とJamsani医師は述べています。「私たちにとって制約ではなく、より多くのことを、より良いことを行うための手段なのです。」このような考え方は、複雑性と人々の健康への価値が進化し続ける臨床検査医学の将来にとって非常に有望です。検査室のリーダーがどのように反応するかが、この分野が変化に伴う課題にどれだけ適切に対応し、同時により良い未来を築けるかを左右します。「これから大きな波が次々に押し寄せてくるでしょう。」と前川氏は述べています。「波にのみ込まれることなく、巧みに波に乗りこなし、自ら波を作り出すための努力をすべきです。」

重要なポイント

 

  • 検査室にとって将来予測されるニーズや課題を主体的に特定し 、現在の課題と併せて検討すること。現在と将来の両方のニーズに対応できる、統合的で創造的な解決策を模索すること。
  • 検査室が重視する品質と顧客サービスへの焦点を維持し、すべての変化が検査室の中核的価値と目的に沿うようにすること。検査室の主な目標の達成にどれだけ役立つかを考慮して、更新や適応のためのあらゆる潜在的な機会を検討すること。
  • 「箱なし」の問題解決につながるアイデア創出にスタッフや同僚を巻き込み、、検査室スタッフが教育、リーダーシップ、業界、技術に関与できるようにすること。これにより、検査室は分野全体とともに進化しつつ、人間の専門性を常に中心に据えることができます。

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