広東中病院の臨床検査室ではリーンシックスシグマ(LSS)を導入して、プロセスの合理化・チームの連携・無駄の排除を推進しています。2013年にスタートさせて数年で多くの成果を上げています。
LSSによる変革の端緒となったのは、臨床検査室のスタッフを対象としたアンケート調査でした。この調査から、検査室という環境に不満の原因があることが判明しました。スタッフは物理的な騒音・湿度・埃ばかりでなく、ポジションが不安定であることや仕事量の多さにも不満を抱えていました。
これらの課題を解決するため、検査室はLSSトレーニングを導入しました。1回目のリーンマネジメントセッションは2013年上期に実施され、リーンの原則を導入するポイントを特定していきました。明確になった問題を特定・分類して、解決策を生み出すためブレインストーミングなどが行われました。その結果、2013年-2017年間で仕事に対する満足度が12%アップしています。これは、収入・賞与・キャリアアップの満足度が大幅に向上した結果です。
2013年の研修では限られた部署のスタッフしか参加しておらず、組織全体にリーン原則が十分に浸透しなかったため、以前の悪い兆候が出ていました。そのためリーントレーニングを2017年上期に再度実施しています。2017年下期と2018年上期は、リーン原則にもとづく改善に注力しました。
この2度目の改善期間中、検査室の安全性を向上させるため、チームはラボ内のリスクを徹底的に検討・統合して、包括的な評価を行うことにしました。特定された336のリスクから、52の優先行動計画が策定されました。これらはさらに、達成可能な短期目標と中期目標に分類されました。リスク例としては①複雑な検体処理プロセス②検査室内複数部署をまたぐ検体③収集される検体のクオリティ④故障しがちな機器システム、などが挙げられています。
結果: より効率的で安全なワークフローの実現
リーン評価プロセスから、簡潔明瞭な改善策が立てられました。たとえばリーン原則導入以前、検査スタッフはサンプル処理中平均2345メートルの距離を移動していました。搬送の最適化を行うことで、距離は1546メートルに短縮され、スタッフはリスクや問題対処に、より多くの時間を割くことができるようになりました。
またLSS評価を通じて、試薬管理プロセス標準化の必要性が確認されました。各試薬を㋐判読しやすくラベリングし㋑バッチ毎に並べて保管㋒さらに視認性を高めるマップを冷凍庫の入口に掲示しました。その結果、試薬の廃棄量は減り、ボトルの出し入れも効率的になりました。
LSSがきっかけとなった、3つめの改善例はサンプル品質です。骨髄塗抹標本の高い不適合率(20.3%)が問題となっており、原因は①オペレータが検査に慣熟していないこと②品質管理が良好でないこと、のふたつに特定されました。そのために検査の現場では検体再採取のコストがかかり、患者さんも侵襲的な検査を再度受けねばならない状況でした。
LSSの原則を適用して、以下三種の解決策が必要と判断しました: ㋐コミュニケーションを改善する㋑EDTA-K2抗凝固採血管を使用する㋒全骨髄塗抹を経験のあるスタッフが行う。解決策の実施から1週間で不適合サンプル減少の効果が出たものの、さらに半年経過した時点では導入前よりも不適合率が悪化していました。この結果を受けて再度リーントレーニングと評価をする必要性が指摘されています。
プログレス(進歩)=プロセス
私たちが経験から学んだことは、LSSは検査室の効率を向上させるが、その進歩を維持する効用は永続的でない、ということです。リーンマネジメントは、継続的なプロセスです。LSS を1回きりの万能解決策と捉えるのでなく、定期的なパフォーマンス評価を併用しながら、継続的な検査室の改善に努める姿勢が肝要です。
This article is based on the presentation “Using Lean Six Sigma to improve laboratory efficiency” at the Roche Efficiency Days (RED) 2018 REDefining perspective in Guangzhou, China.