米国の実例: リーンシックスシグマを用いた分子病理&細胞遺伝学ラボの再構築

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米国最大規模の総合的な分子病理診断サービス企業であるAtrium Healthは、ノースカロライナ州に位置し、分子病理学ラボでは同州ならびにサウスカロライナ州から検体を受け入れています。年間75万件の検査を実施するのみならず、各種の臨床試験にも積極的に取り組んでいます。中でも細胞遺伝学ラボは、米国最大の非営利検査ラボです。この細胞遺伝学分野の検査は、検体数も多く要件も厳しいため、ワークフロー改善のためにリーンシックスシグマ(LSS)の手法を導入しています。LSS6つの原則は、作業プロセスを合理化し、無駄を削減するために設計されています。

同社が提供している広範な検査を考えると、検討・評価すべきプロセスは多岐に及びました。項目としては、遺伝性疾患/感染症/血液・固形腫瘍/染色体解析/FISH解析/分子細胞学的解析に対応しています。培養と複雑な解析における、自動化とスタッフ配置が最大の課題となっています。

Atrium Healthは、かつて検査数の拡大を図ったものの、ラボ設備のキャパシティが不足する状態に陥ったことがありました。そうでなくても当時は、複数の施設や建物に検査室が点在している状況でした。たとえば細胞遺伝ラボはリハビリ棟の地下、微生物ラボは病院本棟、分子病理ラボは分院にあるといった具合だったのです。

2015年、すべてのラボを集約化し、リーン原則に基づき効率的なレイアウトを実現したスペースを作ることを決定しました。目指すゴールは、ワークフローと生産性の向上/スタッフの相互技能訓練/自動化の導入でした。設計思想には、将来の再編成の必要性が生じた場合も、フレキシブルに対応できることというオプションを盛り込みました。

スタッフはPDSAサイクル(Plan – Do – Study – Act: 計画-実行-評価-改善)にのっとり、新設計のビルでグループごとのLSSトレーニングを、数か月間受講しました。ここでいうグループには、ラボのスタッフだけでなく、セキュリティ/IT/メンテナンス担当の従業員も含まれています。全員が設計プロセスに参加し、チームがイニシアチブを握るかたちを取り、臨床検査技師自らラボを設計しました。

全チームが段ボール製の原寸大検査機器をハリボテ模型で作成し、所定の位置に模型を配置して、どのようにワークフローが機能するかを検討しました。このプロジェクトには多くの時間とエネルギーが投入しました。あるチームは250個の段ボール模型を作り、5日間で80時間もの間寝食をともにしました。この設計プロセスは大変な作業でしたが、楽しく創造的なプロセスでもあり、チームの一体感を高める効果もあります。

各々のラボは、9-12回の設計作業を繰り返しました。空間的関係の想定練習は、最も実用的な配置と、特定施設の近接性を判断するうえで重要でした。例を挙げると、検体/機器/補充品などは、トラックの荷下ろし場にほど近い建物の裏手に配置しました。検体の移動距離を短縮するために、微生物ラボは検体管理エリアのそばに配置することにしました。ラボごとに個別で保管されている補充品が、ラボ内スペースを占拠しているという問題に対応するため“スーパーマーケット” エリア、つまり基本的には物資を保管するためだけの大きな倉庫を設けました。

2015年2月、細胞遺伝ラボは他チームに先駆けて新スペースに移設し、新ラボ設計がもたらした改善 - 格段に効率的なサプライチェーンや、快適でスムースなワークフロー - を享受しました。ラボで働く検査技師の移動距離は従来の80-90%のレベルに減少し、検体の移動距離も86%にまで短縮されました。

この移転は、効果的なスタッフ配置にもポジティブな影響がありました。上記のスーパーマーケットでの物資保管によって検査技師は、より良い環境で自身の仕事に集中できるようになりました: 結果的に、大幅なTAT短縮やモチベーションおよびエンゲージメント向上をもたらしました。スタッフの相互技能訓練や複数ラボ(微生物や分子病理など)での自動化によって、検査の目詰まりは激減しました。

リーンなラボ環境への変革は、勤務するスタッフにパラダイムシフトをもたらしました。彼らは、協力的・効果的にコミュニケーションしながら仕事に取組めるようになり、結果として時間削減と検査フロー改善を達成しています。効率アップを目指すあらゆるラボにとって、LSSの導入は経済的で実用的な解決策となるはずです。 


This article is based on the presentation “Continuous process improvement in cytogenetics and molecular pathology” at the Roche Efficiency Days (RED) 2018 REDefining perspective in Guangzhou, China. 
 

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